外反母趾

外反母趾を切らずに癒すには

 一般的には、外反母趾の治療=手術と考えている方が多いと思いますが、外反母趾の手術をしたからといって、希望通りの結果になることは少ないのです。


 当院で行った術後1年目の追跡調査でも、手術をして良かったという人は3人に1人しかませんでした。術後3年以後の場合では、更にその評価が低くなっていたのです。


 そこで、見た目はひどい外反母趾であっても、最初から明らかに手術をしない方が良い場合もあるので、もう一度考えてみましょう。


 とりあえず、変形はしているがさほど歩行に支障が少ない、或いは親指に力が残っている場合は、保存的な療法を試みるべきです。骨の変形よりも、主に横中足靭帯が伸びきってしまい、指全体に力がなく萎縮しているもの(靭帯性外反母趾)は、手術で指の形を整えても靭帯の力が弱いため、すぐ再発したり、また足裏のバランスが崩れ、かえって他の所が痛くなる二次的障害を起こしやすく、手術の予後もよくありません。


 手術をしても伸びきったり、萎縮した靭帯の力を戻すことは困難であり、こういう足をした人達は親指の変形だけでなく、足全体にもすでに変形が起こっているので、親指だけ治しても足全体の形やバランスそのものが狂っているため、良い結果は得られないのです。また、ハンマートゥ性外反母趾や病変性外反母趾で変形のひどい場合は、足全体の形そのものが既に個性的な形で、それなりの機能的な役割をしている場合が多いので、手術によってバランスが変わり、かえって悪くなることが多いのです。同じ外反母趾でも、成功率の高いものと極めて低いものがあるので、慎重に対処してもらいたいと願うのです。

外反母趾の疑いがあったらまずこの考えを

 「これって外反母趾?!」と気付いても、「ただ親指が曲がるだけのものか」と受け取る人もいると思いますが、軽く考えないで下さい。外反母趾とは親指が曲がることが最終結果ではなく、そこから二次的障害を発生させてしまう所に問題があるのです。

 何度も言いますが、親指がただ曲がるだけの単純なものではなく、それが引き金になって、次第に関節の変形や老化、原因のはっきりしない痛み、そして一生苦しむ程の不調、障害を起こしてしまうのです。これが一生元気で暮らせる人と、いつも不調や痛みで悩みながら一生を送る人との差になっているからです。

 外反母趾の疑いがあったら最初に次のような考え方で対処してください。


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【1】 まず、これ以上ひどくならないように一定期間テーピングで進行を止める。そして自分の手を使って、足指の運動可動域の拡大を図る。

【2】 痛みがある場合でも手術は考えないで、何よりも優先して痛みを取ることだけに専念する。痛みはテーピングで100%治るため、精神的重圧から解放され、気持ちが楽になり、冷静な判断ができるようになると、自然と手術を考えなくなる。

【3】 痛みがない人は、二次的障害が起こらないように、4~5ヶ月間テーピングで足裏のバランスを整え、正しく歩けるように訓練する。次第に正しい筋肉が足の裏についてきて、曲がっていた指も30%改善し、そしてなによりも健康になってくるのです。

痛みのある人は「今、曲がる時」早めの処置を

 痛みがある場合は、今、曲がる時であり、進行が進んでいる時期なので、一刻も早くテーピングで足裏のバランスを整えて下さい。早ければ早いほど痛みも早く取れ、なにより変形を最小限にくい止めることができるからです。人によっては痛みの後1~2ヶ月で急に骨が出っ張ったり曲がったりします。

 逆に言えば、外反母趾は曲がる時が痛い時でもあるのです。また痛みが軽く慢性的な場合でも、我慢して2~3年放っておくと、骨が出っ張ったり曲がったりしますが、これだけ放っておくと痛みだけは自然と無くなってきます。しかし変形は一生残ってしまい、更に二次的な障害を発症させてしまうのです。

 これは、腰でも同じような事が言えます。腰も曲がる時が痛み、曲がってしまえばたとえ杖をつくようなひどい曲がりでも、痛くはないのです。昔は腰が曲がり、杖をついた老人をよくみかけましたが、最近はむやみに我慢する人がいなくなり、早めの処置をするため、ひどく腰の曲がった人を見かけることはまずありません。これは早めの処置が重要だということを物語っている一例なのです。

 早めの処置とは・・・


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【1】 足裏のマッサージ、足指の運動可動域の拡大、グーパー運動をする。

【2】 テープで足裏のバランスを整え、正しく歩けるように訓練する。(痛みや変形が著しい場合は、必ず専用サポーターを併用する。)

【3】 靴の中には免震効果が著しい、人工筋肉素材の治療用インソールを入れる。(通称免震インソール)